小児用肺炎球菌ワクチンについて

肺炎球菌とは?
 肺炎球菌は、小児における中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、敗血症及び細菌性髄膜炎の主要な起炎菌で、インフルエンザ菌と並び、小児の細菌性感染症の主な原因菌です。肺炎球菌は病原性が強く、全身感染症、いわゆる侵襲性肺炎球菌性疾患の場合には症状の進行が早く、重症度も高いことから世界的にも乳幼児及び小児における罹病及び死亡の主な原因となっており、そのため小児科領域においてはもっとも重要な病原体のひとつとして位置付けられています。全世界で5歳未満の乳幼児における肺炎球菌による死亡は毎年100万人に上ると言われています。さらに1990年以降は、薬剤耐性(抗菌剤に抵抗性をもつ)の肺炎球菌等が急速に増加して、治療も難しくなっています。
細菌性髄膜炎とは?
 細菌性髄膜炎とは、細菌が脳や脊髄を覆う髄膜に進入し炎症を起こす感染症で、日本では、年間約1,000名が罹患していると推定されています。その原因になる細菌の6割強がインフルエンザb型菌(Hib)で、約2割が肺炎球菌によるものです。Hibや肺炎球菌による髄膜炎は多くの場合が乳幼児期の子どもたちがかかります。細菌性髄膜炎の早期診断は非常に難しく、また近年、起因菌の薬剤に対する急速な耐性化(薬剤が効きにくくなる)が確認されており、難治療例の増加が指摘されています。重篤な予後、早期診断の困難さ、薬剤耐性菌の出現という状況からすれば、予防が非常に重要な疾患といえます。

小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)とは?
 肺炎球菌のうち、小児に重篤な感染症を引き起こす主な血清型7種による、小児の侵襲性肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎、菌血症など)を予防する日本ではじめてのワクチンです。2000年に米国で承認を受けて以来、世界99カ国で承認、97カ国で使用、41カ国において国の定期接種プログラムに導入されています。定期接種をしている国では細菌性髄膜炎などの重い感染症の発症率が98%下がりました世界保健機関(WHO)では、2007年に小児用の肺炎球菌ワクチンを世界中で定期接種とするように推奨を出しました。
 小児用肺炎球菌ワクチンは非常に有効なワクチンで、昨年から日本でも接種可能となったHibワクチンと合わせて接種する事で、小児の細菌性髄膜炎の発症を高率に押さえられます。これまで日本では接種できなかったこのワクチンが平成22年2月24日から日本でも接種可能となったのです。現在、このワクチンの接種は定期接種ではありませんが、法定外予防接種として、行政から補助金が出ることとなり、生後2か月から5歳未満までの対象者は当地域では無料で接種できます。
 小児用肺炎球菌ワクチンの接種法は、標準では、2ヶ月以上7ヶ月未満で接種を開始する事が勧められます。初回免疫3回(27日間以上の間隔で)を12ヶ月齢未満までに完了し、追加免疫は、標準として12〜15ヶ月齢の間に行なう事とされています。(HibワクチンやDPTワクチンとの同時接種が認めれれています。)接種開始が遅れた場合、7ヶ月齢以上12ヶ月齢未満の場合、初回免疫2回を27日間以上の間隔で接種し、2回目接種から60日間以上の間隔で、12ヶ月齢後にと追加接種を1回、12ヶ月齢以上24ヶ月齢未満では、60日以上の間隔で2回接種、24ヶ月齢以上9歳以下では、通常1回のみの接種になります。
 肺炎球菌感染症から子供を守るために、9歳未満のお子さんには是非接種しましょう。