HPVワクチンについて

HPVとは?
 HPVとは、ヒトパピローマウイルスの事で、子宮頸がん発症の主要な原因である事がわかっています。このウイルスは性行為により感染しますが、特別な人だけが感染するのではなく、多くの女性が一生のうちに一度は感染するごくありふれたウイルスです。HPVには様々なタイプがあるのですが、その内発がん性HPVには15種類ほどのタイプがあり、その中でもHPV16型、18型が子宮頸がんから多くみつかるタイプです。発がん性HPVは感染しても多くの場合、感染は一時的で、ウイルスは排除されますが、感染した状態が長い間続くと、数年から十数年かけて前がん病変(がんになる前の異常な細胞)を経て子宮頸がんを発症する事があります。またこのウイルスは一度排除されても抗体ができず、何度も繰り返し感染してしまいます。

 平成25年(2013年)4月1日から定期の予防接種となりました。対象年齢は、12歳となる日の属する年度の初日から、16歳となる日の属する年度の末日までの間(小学校6年生〜高校1年生相当年齢)にある女子で、13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間(中学校1年生)が標準的な接種期間とされています。
 日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本婦人科腫瘍学会、日本産婦人科医会等からは、10〜14歳の女性に対する接種が最も推奨されており、次に15〜26歳の女性への接種が推奨されています。また、ワクチン接種を希望する27〜45歳の女性にも接種が勧められています。
 しかし残念な事に、平成25年6月14日に積極的な勧奨の差し控えが発表され、その後令和4年4月に勧奨接種が再開されましたが、現在は中々接種が進まない状況にあります。
 世界的には、ワクチン接種が進んでおり、フィンランドにおいて、HPVワクチンが子宮頸癌等のHPV関連癌を予防したとする速報が報告されています。また、米国や英国、オーストラリアやスコットランド等ではHPVワクチンの導入後に大規模な疫学研究が実施されており、子宮頸癌患者の減少を示唆する報告がいくつか発表されています。HPVワクチン導入前に比べて導入後には、ワクチンに含まれるHPV型の感染率の明らかな減少や、前癌病変の検出頻度や発生リスクの有意な減少が認められています。子宮頸癌のほとんどはHPVの持続感染から前癌病変を経て発癌に至るため、これらの疫学研究の結果から、将来的には子宮頸癌患者が減少していくことが期待できます。
 わが国では、積極的な勧奨が再開された後も、中々接種率が上がらない状況が続いています。当院では、掛かりつけの患者さん、インフルエンザ等のワクチンを接種しに来られた患者さんに積極的にHPVワクチンについてご説明し、接種して頂けるようにしています。どうか正しい情報を入手し、大事なお子さんたちが、子宮頸癌に罹患する危険を少しでも減らせるようHPVワクチンの接種をして頂きたいと考えています。

 通常のHPVワクチンの定期接種の対象年齢の間に接種を逃した方に対するキャッチアップ接種が実施されていますが、期限が迫っています。平成9年度〜平成19年度生まれまで(誕生日が1997年4月2日〜2008年4月1日)の女性で、HPVワクチン接種を受けていない方は、是非、早期に接種を受けてください。高校1年生相当年齢の方も、9月までに接種開始しないと、接種機会を失ってしまいますので、注意が必要です。
 HPVワクチンに関する情報は、厚生労働省のホームページにも掲載されています。厚生労働省のHPへはこちらから